第13話 学生社長、誕生
大学3年生春休みが明けて、久しぶりに大学に来た。
これで僕もようやく4年生になった訳だ。
みんなそれぞれ満喫したらしく、 清々しい顔をしている。
僕はというと誰よりも充実した春休みを過ごした気持ちでいた。
なんて言ったって春休みの間に会社を作っちゃったんだからね。
みんなは就職活動でスーツにネクタイの姿だったけど僕は普段着だったのがなんとも言えない優越感に繋がった。
「そうだ!俺は誰からも束縛されない自由な経営者なんだぜ!」
心でこう叫んでは自分を褒め称えていた。
「げえーー!マジ!?石原、春休みの間に社長になっちゃったのかよ!」
「俺にも名刺ちょうだい!マジ、こいつ凄くないか!?」
またこんな友人たちの声を聞いているうちに、更に僕は天に昇るようないい気持ちになった。
でも、会社を設立して早2週間。未だに売上げはゼロ円だった。
僕には、自動車業界にコネも何もなかった。
だからひたすら飛び込み営業をする以外に新規開拓の方法はなかった。
飛び込み営業をかけるのは新車ディーラーや中古車販売店。
埼玉の自宅から港区の大学に通うまでの通学路を車通勤に変更して
毎日飛び込み営業活動をしながら学校に通学し、授業を受けては営業しながら帰宅する毎日だった。
始めは楽しかったが、あまりにも知名度の低いこのデントリペアを
広めていくにはとても大変なことだと途中から認識しだした。
これは思ったより簡単にはいかないかもしれない・・・。
実はこの営業活動がとんでもない地獄の入り口だった。