第11話 止まらない不安
ヘコミ修理の講習に入ってからあっという間に3週間が過ぎた。
なんとか5mm程の小さなヘコミなら直せるようになってきた。
でもとてもじゃないけど現場ではこんなレベルじゃあ使い物になりそうにない。
しかもきれいな丸のヘコミしか直せない。
歪な形や鋭角に入ったヘコミは一切直せない。
そんなデント屋さんは世の中で通用する訳がない。
そうこうしているうちに1ヶ月が経ち卒業試験の日が来た。
「はいはい!では今日は卒業検定です!ここにいくつかへこみを作るので
これらを直してみて下さい。時間は無制限です。」
自分の人生を生きてきた中でも最大の集中力をだして挑んだ。
なんとか自分なりには納得のいくような仕上がりにはなった。
でも一ヶ所直すのにかかった時間は2時間だ。
一人前のデント屋さんなら5分でできる仕事だ。
「はい!石原さんはこれで卒業になります!おめでとうございます!!」
あっさり卒業できた。
卒業証書を頂き卒業する事は出来た。
もうホントにいいの??
それと同時になんとも言えない不安感が僕を襲った。
果たしてこれで僕はこの先、この仕事で食っていけるのか?
本当に今の技術レベルでお金をもらえるのか?
あまりにも不安だった僕は、社長に交渉して更に一ヶ月講習に通わせて頂くことをお願いした。
社長はありがたい事にすんなり僕の要求を受け入れてくれた。
現在、僕は学生。
営業経験ゼロ。
誰かに何かを販売したり、勧めた事は一度もない。
こんな僕に本当に仕事が取れるようになるのか?
マジで不安だ!