デントリペアに関する研究結果

デントリペアに関する研究結果

近年,日本経済の技術競争力を支える中小企業において技術力が低下している現状がある.その原因として,約7割の企業が技術・技能継承がうまく行われていないと挙げている.その中でも競争優位に寄与している技術は属人性の高い高難度の技術が多く,熟練者の持つ技術力を個人から組織へと蓄積するために標準化を行う必要がある. 従来の作業の標準化手法としてサーブリック分析やMOST法などが挙げられる.これらの手法は作業を工程に分解しさらに動作へと分解している.しかし,属人性が高い技術は作業者の感覚や意識といった映像には見えづらいものに頼っており作業分解では標準化が困難な現状がある.
一方,マーケティングの分野において顧客の要求を把握するための手法として,エスノグラフィ(ethno-graphy)という手法が利用されている.従来,文化人類学などにおいて対象を観察し消費者の行動の背景や要因を解明する手法である.この手法を,作業の中でカンやコツで行われている重要な部分を抽出し標準化を行うために用いた.
本研究では,技術者の技術レベルや習得理解度向上および現場での教育を目的とした作業手順書作成を目指した.属人性が高く作業者毎の動作が同じである必要がない作業工程を特殊作業工程と定義し,統計解析により作業時間から特殊作業工程を抽出した.さらにエスノグラフィを用いて作業手順書を作成する方法を提案した.


本研究は全5章で構成されている.

1章 序論
本研究の背景と目的,および本研究の構成について述べた.

2章 作業標準化方法の現状
対象とする特殊作業工程についての定義,標準化の意義・目的および従来の標準化手法についてまとめ,熟練者から未習熟者への技能継承に関する研究および問題点を整理した.

3章 特殊作業工程の抽出と標準化方法の提案
上記の問題点に対して,特殊作業工程における作業の標準化方法について提案した.初めに本研究における標準化の内容及び意義を述べたうえで,特殊作業工程の抽出方法とその工程のばらつきの要因の把握方法について述べ,標準化を行うための考え方となるエスノグラフィについての概要を整理したうえで,エスノグラフィを用いた標準化方法について述べた.

4章 事例による検証および活用方法の検討
3章で提案した手法について実証に基づいた検証を行った.本研究で扱う事例として,自動車修理業S社の協力のもと”デントリペア”という自動車修理作業を対象とした.対象とする作業に提案手法を当てはめ作業標準書を作成することで手法の実行可能性を検証した.また,作成した作業手順書の検証から,未習熟者が自身の作業工程を見直すことで作業時間のばらつきを抑える効果が見られたことにより未習熟者が自学自習する際に利用する教育用の資料としての有用性が得られた.

5章 結論および今後の展望
本研究の結論および今後の展望を述べた.

 


 

本章では,本研究を理解するうえで必要となる特殊作業工程の定義および従来の作業の標準化方法の概要,現状における技能継承方法について述べた.初めに特殊作業工程の特徴および該当範囲を定義し述べた.次に作業標準化方法として用いられている手法の概要について述べた.最後に現状における技能継承方法について考察した.


 

特殊作業工程の定義

初めに作業工程とは,仕事や作業を進めていくうえでの順序や段階を指す.次に大辞泉より特殊という用語には①性質・内容が他と著しく異なること②機能・用途・目的が限られること,専門専用であること③限られたものにしか当てはまらないものなどいくつか意味がある.
本研究での特殊とは上記の意味を踏まえたうえで,属人性が高く高難易度でコツやカンなどの感覚に頼った側面が大きいという意味で特殊という用語を用いる.
特殊作業工程とは,
・技術の向上に年単位の期間が必要
・作業者ごとに作業順序や作業方法が異なり標準化が困難な作業工程を持つ
という上記の2つの特徴を持つ作業工程と定義する.

特殊作業工程の該当範囲

特殊作業工程の該当範囲は前述で定義した作業工程を対象としており,実際に作業を観察することで属人性が高く標準化すべき工程と何回か作業してみれば身に付く標準化をする必要がない作業工程に分けられる.
例として伝統芸能における和太鼓の演奏作業を対象とするならば,撥の用意や片付け,などは誰がやっても個人差の範囲内に収まるが,演目開始から終了までの演奏技法(打ち方や力の入れ方,リズムの取り方)は短期間で身に付くものではなく演奏者の技量により大きくばらつきが生じる.後者の工程が属人性が高く作業者によるばらつきが大きい特殊作業工程である.


 

作業標準化方法について述べるために,初めに標準化の意味,意義および目的,対象についてまとめ,標準化方法の概要について述べる.

2.3.1 標準化とは

標準化
標準化の定義として,” 実在の問題又は起こる可能性がある問題に関して,与えられた状況において最適な秩序を得ることを目的として,共通に,かつ,繰り返して使用するための記述事項を確立する活動”と日本工業規格(Z8002:2006 ISO/IEC Guide 2:2004)で述べられている.

標準
ここで標準とは標準化における基準となるもので,日本工業規格が作成したJIS Z 8101によると”関係する人々の間で利益または利便が構成に得られるように統一・単純化を図る目的で,物体・性能・能力・配置・状態・動作・手順・方法・手続・責任・責務・権限・考え方・概念などについて定めた取決め”と述べられている.ISO/ICE Guideでは”与えられた状況において最適な秩序を達成することを目的に,諸活動又はその成果に関する規則,指針又は特性を,共通に,かつ,繰り返し使用するために定める文書であって,合意によって確立され,かつ,公認機関によって承認されたもの”と述べられている

標準化の意義および目的
次に標準化の意義および目的について,”人が共同社会を形成し生活を営んでいくうえで何らかの共通した基準を定め,それを普及させ相互の利益の保護を図ること”と古川光(1981)が述べている.また,T.R.B. Sanders(1974)は標準化の目的を細分化し6つにまとめている [5][6].
(1)製品の増大する品種と人間生活における行為の単純化
(2)伝達
(3)全体的な経済
(4)安全,健康及び生命の危機
(5)消費者および共同社会の利益の保護
(6)貿易の壁の除去

上記の目的の中でも本研究では,(1)~(5)を重要視する.

標準化の対象
標準化の対象として企業,団体,国家,国際などいくつかのレベルがあり目的が異なる.

企業:社内標準を定めることで企業が効率の高い経営管理の実現を図る
団体:同業業界によって編成される団体レベルにおいては団体標準として産業界の共存共栄を図る
国家:国家規格を持ち国民生活の合理化,福祉の増進を図る
国際:国際標準を持ち国家間の意思の疎通を高め,標準の国際的展開により利用者の公正と利便性を図る

2.3.2 作業標準化方法の概要

ここでは,従来行われてきた作業の標準化方法について述べていく[2].
作業の標準化を行うにおいて工程を作業に分解しさらに作業を動作へと分解している.ここでいう動作とは,「工程や作業の目的を果たすための具体的な方法のことであり,必要な部品を探したり,つかんだり,選んだり,組み立てたりする作業者の個々の動き」を指す.動作の中でも作業の目的を達成するために「必要な動作」と「本来不必要な動作」に分けられる.「本来不必要な動作」を減らし「必要な動作」の中でもさらに無理・無駄・ムラのない動作の順序,方法および関連する部品,材料,治工具,作業配置などを改善し短時間でかつ疲労が少ない動作を追求することが重要である.上記の動作を追求する方法を動作分析という.

動作分析とは作業者が行っている動作の順に動作方法を観察し,手,目を中心に身体各部の動作内容を示す記号を用いて実態を把握分析し図表化したものに基づいて,動作の善し悪しや改善の着眼点を見つめる手法.以下に動作分析の種類を述べる.

両手作業分析
両手の動作の順序や方法を両手の動きを関連付けて把握し,それぞれの動作を作業,移動,保持,手持ちの4つの記号を用いて分類し分析する方法.

サーブリック分析
手足の動作や目,頭脳の動きを観察し,動作の順序や方法を両手,目のそれぞれの動きを関連付けて把握し,動作を基本的な最小の要素単位である18のサーブリック記号を用いて分類し,分析する方法.

 

メモモーション分析
作業をフィルムに11秒1コマ程度(コマ落し)で撮影し,それを映写して観察,分析を行い,作業者やあらゆる物の動きの問題点を把握する方法.コマ数を数えることによって時間値が求められる.

VTR分析
作業をビデオテープに撮影し,再生して観察・分析する方法.この方法はあらゆる作業をそのままの状態で記録でき,即座に再生することができるため動作分析以外の作業改善にも広く用いられる.

上記の4つの手法のねらい,対象,利点,欠点がまとめられたものが以下の表である.

表2.1 動作分析の種類と特徴(現場のIEテキスト(上)p183より引用)

4つの手法の中でも作業の対象範囲が広く長時間の作業を分析することができるメモモーション分析とVTR分析が利用されている.


 

 2012年に発行された中小企業白書において中小企業の技術競争力が低下している原因として,約7割の企業が技術・技能継承がうまく行われていないことを挙げている[1].

図2.1 中小企業の技術競争力が低下している理由(出典:経済産業省2013年)

1990年代付近から,熟練技術者の高齢化が進み2007年問題として技能伝承の必要が叫ばれていたため,技能継承に対する取り組みは盛んに行われてきた.その取り組みとして大きく2つのアプローチがとられていると町野は述べている[7].

(1) 熟練者の作業を撮影し,取得したデータを分析・記述するアプローチ
未習熟者の技能向上の支援を行うことを目的として,産業技術総合研究所の赤松はミシンによる裁縫作業を採り上げ高度技能保有者と技能未習得者との行動上の差異を分析することで,高度技能のポイントを明らかにした技能伝承ガイドブックを開発した[8].

(2) 熟練者からヒアリングした内容を分析・記述するアプローチ
経済産業省が中心となり推進してきたデジタル・マイスタープロジェクト(ものづくり・IT 融合化推進技術)では,加工全般にわたる中小企業の現場での生データおよび専門家の知識を収集し,整理・体系化の後データベース作成と検索システムの開発を行った.その中の事例として綿貫は,鋳造技術の技能伝承の取り組みとして会話分析に着目し,技能者の意見をもとに技能者の知識を抽出し,マルチメディアによる可視化した技能伝承システムを開発した[9][10].
上述のように技能継承のためにいくつもの標準化への取り組みが行われているが,特殊作業工程の標準化を行うために解決すべき問題がある.
その問題として,大まかな工程は定められているが作業者毎の動作が同じである必要がないため, 従来の動作分析では標準化を行うことが困難であることが挙げられる.
そこで動作が同じでなくとも,熟練の作業者は無意識の内にカンやコツといった効率の良い動作を行っていると仮説を立て対象の行動の背景や要因を解明する手法であるエスノグラフィといった行動観察の観点に着目した.


本章では,特殊作業工程の定義および従来の作業の標準化方法の概要,現状における技能継承方法についてまとめた.従来の標準化方法や現状行われている技能継承の取り組みについてまとめたうえで,技能継承をする際の問題点について述べた.熟練者が持つ技能は属人性が高く感覚や作業者の意識といった部分が重要視されているため,そういった感やコツといった要素を抽出する方法を含んだ標準化方法が必要であることが分かった.


 

第2章で整理した,熟練者から未習熟者への技能継承の問題点を基に,特殊作業工程における作業の標準化方法について提案する.
提案手法の構成は以下の図のようになっており,3.2では本研究における標準化の内容及び意義を述べたうえで,特殊作業工程の抽出方法とその工程のばらつきの要因の把握方法について説明する.3.3では対象とする作業工程から標準化を行うための考え方となるエスノグラフィ(ethno-graphy)についての概要を整理したうえで,エスノグラフィを用いた標準化方法について述べる.


図3.1 提案手法の構成図


 

提案手法を説明する前に,本研究で扱う特殊作業工程と標準化の内容及び意義について整理する,

2章では一般的な標準化の概要について述べたが,本研究で扱う標準化は「作業手順および目安を定めること」という意味で用いている.
一般的に標準化という用語を思い浮かべると製品の連続生産現場で用いられている標準作業時間のような秒刻みで工程手順を詳細に記述し誰が行っても同じような結果が得られるようなものを想像すると思う.
しかし,2章で定義した特殊作業工程は感覚的なものが多くそれらを定量的に数値化するのは困難である.そのため技術者が技術を伝承するときに大雑把に何をすればいいかをまとめているのみでその中で曖昧な表現が出てきてしまう.それは全ての手順が秒刻みで指定されているわけではなく,状況に応じて随時変え最終結果がうまくいく方法をとっているからである.しかし,その過程において複数方法はあり手順は確定していないがその中にも共通している要素やカンやコツといった要素が含まれているのではないかと考えた.
上述した作業手順並びに技術のカンやコツとなる目安となるものを定めるといった意味で標準化という用語を用いる.

次に,本研究における標準化の意義を2章の標準化の意義から整理して以下のようにまとめた.
‐作業の単純化による作業ミスの減少
‐技術の教育および継承する際に伝達をしやすくする
‐認知度の向上に伴い経済性が向上
‐消費者および同業団体の利益の保護
標準化による技術レベルの向上およびばらつきを抑えることで上記のような目的を達成することができる.

続いて,提案手法の説明を述べる.
専門性の高い作業の標準化を行う際に,属人性が高く標準化すべき工程と何回か作業してみれば見に付く標準化をする必要がない作業工程がある.そのため,初めに属人性が高く難易度が高い特殊作業工程を抽出する方法について述べる.さらに,特殊作業工程のばらつきの要因を特定する手順について述べる.

 

 特殊作業工程とばらつきの要因の選定

まず作業者一人ずつの全作業工程の時間を計測する.次に工程ごとの作業時間の平均値と標準偏差を算出し比較する.平均値と標準偏差の高い作業工程は作業者によるばらつきが大きく改善すべき工程だと考えられるため,両方の値が高い工程について作業者に該当した工程はカンやコツなどを要する作業工程か尋ねたうえで特殊作業工程として扱う.

次に,特殊作業工程の中で作業時間に影響を与えている要因が何かを把握するために撮影映像や作業者の話を基に要因を抽出し特性要因図でまとめる.
さらに,特性要因図の中から特に特殊作業工程のばらつきに影響を与える要因は何かを知るために作業者に対し再度インタビューを実施し要因を選定する.

実験計画による要因の特定

前述の方法により特殊作業に該当した作業工程に対して,選定した要因を考慮した実験計画を組み実験を行う.そして作業時間に対して要因ごとの影響度を分散分析により把握する[11].


 

3.3.1 エスノグラフィ(ethno-graphy)の概要

本研究では技能継承の際の感覚やコツといった作業の重要な部分の抽出方法の考え方として,エスノグラフィ(ethno-graphy)の考え方を用いた.エスノグラフィの定義,特徴,エスノグラフィの適用分野の研究を順に述べる.

エスノグラフィの定義

エスノグラフィ(ethno-graphy)は,民族:ethno,記述:graphyという意味を持ち,フィールドで生起する現象を記述しモデル化する手法である. また,エスノグラフィは人々が実際に生きている「現場を理解するための方法論」と定義される[4].
文化人類学における未開の民族の調査に起源をもち,その後,社会学で逸脱集団や閉鎖集団の生活様式を明らかにする方法として用いられるようになった.記述とは,フィールドへの参与観察によりデータを収集し,その分析を通して現象の構造とプロセスをストーリーとして描くことである.モデル化とは,そうした記述によって,反復して出現する現象のパターンを発見,蓄積し,それらを概念レベルで把握し体系的に関連づけることである[12].

エスノグラフィの特徴

エスノグラフィは質的研究の中でも自由度が高いという特徴がある.背景として,「異文化」や「他者」の世界を理解する方法として発達した経緯から既存の説明の枠組みが通用しない,未知の事象を理解する為に適している.
エスノグラフィの強みとして,対象者が無意識に行っている行動の潜在的な意識や思考の理由を探し出せる点.対象の行動を撮影し,インタビューを重ねることで対象者の気づきやニーズといったものを抽出することが出来る.

エスノグラフィの適応分野の研究

近年では,教育学,看護学,マーケティングやITの分野でも注目を浴び,応用されるようになっている.教育学や看護学において日常的な生活における対象者の悩みや問題を解釈する方法として用いられている [13] [14].
マーケティングにおいてはユーザ行動を深く理解する手法として注目を浴びている.例えば,花王では「アンチエイジング(抗加齢)に関する消費者の考え方や行動理由を理解すること」を目的とし消費者のインタビューやアンケートでは見えづらい本音やこだわりといった点を抽出するのに用いている[15].
ITの分野では,観測データや観察データを基に話し合った結果を用いて業務プロセスの改善方法として取り上げられている.野村総合研究所では銀行の事務業務を対象に用いて業務の問題点に気づき役割分担や人員配置の効率化に活用した[16].
また,エスノグラフィの視点を取り入れた行動観察手法を用いたサービス業の従業員の行動および現場を改善するといった研究も行われておりガス設備の取り付けや保守作業現場の安全性の向上や飲食店の調理作業組み換えによる作業効率向上を行った[17][18].


 

3.3.2 エスノグラフィによるノウハウの抽出と作業手順書の作成方法

初めに3.2で特定したばらつきの要因を含んだ作業に着目し特殊作業工程のばらつきの要因と具体的な作業方法の関係を把握するために要因を含んだ作業に対して作業者毎のフローチャートを作成し作業者を分類する.次に,分類された作業者毎にエスノグラフィを用いてノウハウの抽出を行う.エスノグラフィは大きく分けると以下の3つステップに分けられている.

<観察のステップ>
・行動観察とインタビューによる気づきの抽出
<分析のステップ>
・抽出結果の共有と解釈
<改善のステップ>
・作業者が理解しやすい表現を用いて作業手順書の作成

観察のステップ
ビデオカメラやボイスレコーダなどを用意し,作業が行われている状況を観測し作業者の行為や出来事を記録する.観察時および撮影映像を基に対象者へフィードバックする時に観察対象に特徴的な動きが見られた場合にインタビューを行いなぜそのような行動を行ったのかを尋ねる.注意点として,尋ねる際に相手の考えを誘導することや選択肢を与えることをせず自由形式により対象者の価値観や心理を引き出す.

分析のステップ
観察結果から得られた様々な行為や出来事に対する「気づき」を整理し,工程ごとに分類・比較することで特徴的な傾向を浮き彫りにする.その後,対象者複数人とともに対話を通じて得られた気づきに対して,どのように感じるか気づきから得られた行動やコツは有効かといった点をまとめていく.注意点として,互いの意見を否定せずに考えや解釈に耳を傾けること.

改善のステップ
分析のステップにより明らかになった内容をまとめ,目的に沿った課題の解決案を話し合い作成する.本研究では,作業手順書を改善のステップの成果物として作成する.


 

本章では,初めに特殊作業工程の抽出方法とその工程のばらつきの要因の把握方法について述べた.次に,提案手法に活用したエスノグラフィの概要を整理した.さらに第2章で述べた特殊作業工程における技能継承の問題点に対してエスノグラフィの無意識の行動や考えの理由を模索するのに効果的だという特徴から解決する可能性を示唆し,エスノグラフィの考え方を活用した特殊作業工程における作業手順書の作成方法を提案した.


 

本章では,第3章で提案した手法に対して実証に基づいた検証を行った.初めに対象とする事例についての概要及び手法に当てはめる際の問題点を整理し,提案手法を事例に適用し作業手順書を作成することで手法の実行可能性を検証した.また,作成した作業手順書の検証を行い提案手法の有効性を評価した.


4.2.1 対象事例の概要

初めに本研究で対象とする事例について説明する.本研究ではデントリペアという自動車にできたヘコミを裏から特殊な工具を用いることによって短時間で修復することができる作業を対象とした.
デントリペアの起源は,1940年代にヨーロッパの自動車メーカーが製造の過程でできてしまったヘコミを修復できないかと考え創られた技術である.その後,1970年代にアメリカにおいて大規模な雹災害が起きた際に修理の需要が増え技術が大きく進歩し認知度も向上した.日本には1990年代にアメリカから技術として入ってきた.現在はインターネットでデントリペアに関する記事を検索すると約40万件,店舗件数は1200件以上見つかり自動車業界や自動車好きな人の認知度は向上している.

図4.1 対象作業の修理イメージ図

   
図4.2 デントリペアで用いられる工具(左からデントツール,ポンチ&ハンマー,LEDライト)


デントリペアを研究事例に選択した理由

デントリペアを提案手法に当てはめた理由は2点あり,以下に説明する.

(1)特殊作業工程の定義に当てはまる
2章において特殊作業工程の定義をしたが,デントリペアは修復できるヘコミの種類や修理時間は職人の技能により作業手順が異なることが多い.また,熟練者の技能は弟子入りやデントリペアを教えるスクールに通い基礎を身に付けたうえで3年間は現場を経験しないと身に付かない.以上のことからデントリペアは
・技術の向上に年単位の期間が必要
・作業者ごとに作業順序や作業方法が異なり標準化が困難な作業工程を持つ
という特殊作業工程の定義に当てはまる特徴を持つ.

(2)技術体系が構築されていない
デントリペア業界の現状として技術を教える際は口頭で説明したうえで熟練者が作業を見せ,それを未習熟者が見て実際に体を動かし覚えるといった手順を踏んでいる.しかし,デントリペアの作業手順書や未習熟者が学ぶために利用する教本といったものがない.そのため師事した技術者が技術を知らなければ教わる側の技術者は技術を覚えることが出来ないため技術者毎の技量にばらつきが生じてしまう.

以上の2点より,デントリペア業者のS社のご協力のもとデントリペアを対象に作業手順書の作成方法を提案する.


 

4.2.2 事例に当てはめた手法の説明

初めに,作業の撮影および測定を行うために作業条件の統一を行った.特に今回の研究対象とするデントリペアはヘコミの大きさや深さが同一の作業者が行ったとしても作業時間に大きな影響を与えてしまう.そこで専用の機械を用意し同一の種類のヘコミを作成した.以下がヘコミを作成する機械および作業現場を撮影した画像である.

図4.3 ヘコミを作成する機械および機械により作成したヘコミ

図4.4 作業対象車の全体図(側面および前面図)

図4.5 作業者の修理作業図(ドアのヘコミおよびボンネットのヘコミ)
続いて,第3章で提案した手法に沿って,デントリペアの作業に対して特殊作業工程の抽出及び作業手順書の作成方法を述べていく.

(1) 特殊作業工程とばらつきの要因の選定

対象とする作業全体を撮影し作業者ごとのばらつきが大きい作業工程を特殊作業工程とし,映像や技術者の話よりその特殊工程のばらつきに大きな影響を与えている要因を抽出し,特性要因図でまとめインタビューにより選定する.
以下の表が作業者毎の作業工程の時間値をまとめた結果である.

表4.1 技術者5人の工程ごとの作業時間(秒)

表の色つきの工程が平均および標準偏差の値が大きい工程である.「工具を差し込みヘコミ箇所を押し出す」,「ヘコミ箇所を工具で均す」という2つの工程は技術者の技能や経験によって作業時間が大きく変動する工程であり,インタビューを通して対象事例の中で最も重要視される工程であるということが確認できた.
次に,特殊作業工程の中で作業時間に影響を与えている要因が何かを把握するために撮影映像や作業者の話を基に要因を抽出し特性要因図でまとめた.
特性要因図作成において特殊作業工程のばらつき要因を生産管理の4Mである技術者・工具・作業対象・作業方法の4つの観点から以下の図のようにまとめた.

 


図4.6 特殊作業工程のばらつきの要因把握を目的とした特性要因図

さらに,上記の特性要因図の中から特に特殊作業工程のばらつきに影響を与える要因は何かを知るために作業者の方に再度インタビューを行ったところ対象の作業箇所・構造・作業量が大きく影響を与えている要因として挙げられた.以下に挙げられた3つの要因及び理由を述べた.

・自動車の修理部位(作業箇所)
理由:修理時の体勢ヘコミの視認可否によって修理難易度の変動から

・修理箇所の裏の骨格の有無(構造)
理由:細い工具しか入らないことによる工具のアクセス難易度と押し出し回数の変動から

・ヘコミの大きさ(作業量)
理由:作業箇所の面積の違いによる押し出し回数の変動から

続いて,上記のばらつきの要因が最も特殊作業工程に影響を与えているか,影響を与えている程度はどれくらいかを把握する為に実験計画法を用いた要因の特定方法について説明する.


 

(2) 実験計画による要因の特定
特殊作業工程のばらつき要因である3要因の中でどの要因が最も作業時間に影響を与えるかについて実験計画を組み分析した.「自動車の修理部位」をA,「修理箇所の裏の骨格の有無」をB,「ヘコミの大きさ(直径)」をCとした3因子を2水準で8通りの組み合わせの実験を,技量がほぼ等しい3人の技術者の協力(繰り返し回数3とした実験)で実施した.

表4.2 作業方法に影響を与える要因の組み合わせ

以下の表が実験計画を基に行った測定結果をまとめたものである.左から順番に作業者3人の所要時間を示したもので,実験の組み合わせ番号に対して特殊作業工程の計測時間で表したものである.

表4.3 特殊作業工程の所要時間の測定結果(秒)


次に分散分析を行うことで要因ごとの影響度を把握する.下記の表が測定結果を基に作成した分散分析表である.左から特殊作業工程にばらつきを与える要因,平方和,自由度,分散,分散比を算出したものをまとめたものである.

表4.4 特殊作業工程の分散分析表

 ここで,分散比の値に着目し分散比が有意水準10~20%以下の因子に対してプーリングを行う.プーリングとは測定結果のばらつきに影響がないと思われる因子を誤差にまとめることをいい分散比から判断してすることで,誤差の自由度をあげることで正確な判断が行える.
上記の表の分散比が有意水準に満たさない要因A×B,A×C,A×B×Cに対してプーリングを行う.ここで,要因Cの値は有意水準に満たさないが交互作用であるB×Cが有意水準を満たしているので要因Cはプーリングを行わない.

下記の表がプーリングを行い再度算出した分散分析表である.各因子に対して有意水準5%でF検定を行ったところ因子Bのみが棄却され効果があるという結果が出た.
因子A, B×Cについては,効果はないが無視できないという結果となった.この結果から因子B: 「修理箇所の裏の骨格の有無」が最も作業時間に影響を与える要因であることが特定できた
表4.5 プーリング後の分散分析表

(3) エスノグラフィによるノウハウの抽出と作業標準書の作成
続いて,特殊作業工程のばらつきの要因と作業方法との関係性の把握を行う必要がある.特殊作業工程のばらつきの要因(修理箇所の裏の骨格の有無)と具体的な作業方法の関係を把握するために要因を含んだ作業に対して作業者毎のフローチャートを作成し作業者を分類する.

図4.7 対象作業の作業者毎の作業工程のフローチャート

上記のフローチャートは実験計画で撮影した作業者3人の作業工程をまとめたものである.中央のフローが一般的な作業者の作業工程を示したものである.右が従来の工具を異なる使い方で利用していた作業者の作業工程で,左は新たな工具を利用して作業時間を短縮していた作業者の作業工程を示したものである.以上のように作業者を分類した.


 

次に,分類された作業者毎にエスノグラフィを用いてノウハウの抽出を行う.
エスノグラフィは大きく分けると以下の3つステップに分けられている.
<観察のステップ>
・行動観察とインタビューによる気づきの抽出
<分析のステップ>
・抽出結果の共有と解釈
<改善のステップ>
・作業者が理解しやすい表現を用いて作業手順書の作成

本事例においては,熟練の技術者3人と経験年数の浅い技術者1名を対象としたエスノグラフィにより対象の作業のコツやノウハウといった部分を抽出し,作業標準書を作成した.なお,今回対象とする作業は実験計画によって作業のばらつきに大きく影響を与えている要因(修理箇所の裏の骨格の有無)を含めた作業とし,それぞれのステップの結果を以下に述べる.

観察のステップ

初めに対象者の作業工程を撮影し作業映像を流しながらインタビューを行い,作業方法や作業時のコツの抽出を行う.
例)ハンマーを利用してヘコミ箇所を均す工程
熟練者A:ヘコミ箇所を指で押し込むという動作をとっていた.
理由:指で押し込み力を入りやすくし叩く回数を減らしていた.
熟練者B:ヘコミの中心ではなく楕円状に叩くという動作を取っていた.
理由:闇雲に均すのではなく中心から徐々に外側に叩くことでヘコミを押し出す際の出来栄えを向上させていた.

分析のステップ

各作業者から抽出した工夫を共有し,それらの工夫に対してどのように感じたかを話し合い,実際にそれらの工夫を行った意見を集める.
例)熟練者Aのヘコミ箇所を指で押し込むという動作について
熟練者B:(熟練者Aが行った)ヘコミ箇所を指で押し込むという動作は,熟練者の中では当たり前のような動作で,知っていたし有効的だと思う.
熟練者C:当たり前のようなことなので気にしてはいなかったが確かにそういった工夫は行っていた,有効的だと思う.

改善のステップ

分析のステップで集まった意見を基に, 作業手順書を作成する.記載内容として,作業対象の修理部位・使用工具などの基本的な情報と,作業者の自由裁量を入れるために作業手順と主なポイント,図でまとめた.以下の図が作成した作業手順書である.


図4.8 作成した作業手順書例
作成した作業手順書の説明として,上の図の左には修理対象車の情報として特殊修理工程のばらつく要因である修理部位と骨格の有無を記載する.さらに,そのときに必要となる工具と作業工程を記載した.右の図は作業工程の作業手順およびその手順を行う上での主なポイントと可視化して理解度を上げるために図を作成した.さらにその工程を行う上での注意点およびアドバイスを記載した.例として,ハンマーとポンチでヘコミ箇所を叩くという工程では,
①ヘコミの形と深さを観察する
②ヘコミの円周部分にハンマーを当てる
③ヘコミの角度がなだらかになるように叩く
といった3つの手順で行われている.その手順を行う際のコツとして②の手順では「ヘコミの淵のストレスがかかっている部分」にハンマーを当てるというコツやその状態を表した図を作成し記載した.注意点およびアドバイスはその工程を行う際に,手順にはないが知っておくと役に立つことや気を付けたほうがいいことを記載している.


 

4.3 作成した作業手順書の有効性の検証

S社のご協力のもと作成した作業手順書の有効性を確認する為2つの観点から検証を行った.以下にその検証方法について述べた.

検証方法
(1)インタビューによる有効性の検証
作業手順書を評価するために,記載した内容の理解しやすさや表現方法の分かりやすさといった点や作業手順書が役に立つかをインタビューにより評価した.インタビュー項目は以下の8つでそれぞれの項目に対して1~5段階(5が高い評価)評価してもらいなぜその点数を付けた理由について自由意見を集めた.

インタビュー項目
・作業手順書の見やすさ(文字や図の大きさ)
・作業手順書の分かりやすさ(書いてある文章や図が理解できるか)
・作業手順書の文章量(文章量が多すぎるか少なすぎるか)

利用するシチュエーションによる作業手順書の有用性(作業手順書が役に立つと思うか)
・初心者用の教育用としての有用性
・日常利用する用としての有用性
・専門書としての有用性
・作業手順書の総合的な評価

(2)作業時間の比較による有効性の検証
経験年数の浅い技術者に作成した作業手順書を理解してもらい読む前と読んだ後の作業時間を測定し比較した.また,読む前と後でどのように作業方法や技術の向上に違いがあったかをインタビューにより調査した.


 

検証結果

 検証するにあたり,S社の6人の技術者に協力して頂いた.
技術者の内訳として,経験年数が半年未満の技術者が2人と経験年数が5年以上の技術者が4人で前者を未習熟者,後者を熟練者としてそれぞれの技術者に作業手順書を配布し回答を集めた.
(1)インタビュー結果
以下の表が,インタビュー項目の回答結果をまとめたものである.

表4.6 技術者6人のインタビューの回答結果

「作業手順書の見やすさ」・「作業手順書のわかりやすさ」・「作業手順書の文章量」の項目に対しては概ね高い評価が得られた.
「作業手順書の有用性」に関しては,総合的な評価としては高い評価を得られた.次に,各シチュエーションの評価を見ていくと「初心者の教育用としての有用性」が特に高い評価を得ている.「日常利用する用」や「専門書として」の有用性はあまり高くなく,熟練者特に経験年数が高い技術者からの評価が低くなっている.
次に,各インタビュー項目の自由記述および評価の結果に対する考察を以下にまとめた.

作業手順書の見やすさ
全体的な意見として記載している「図の大きさが小さい」という意見が多かった.文字の大きさについては「ちょうどいい大きさで読みやすい」という意見が多かった.
今回作成した作業手順書はA4サイズの用紙に3工程ずつ印刷したもので見難かったことに原因があると考えられる.

 

 

作業手順書の分かりやすさ
全体的な意見として「わかりやすい」という意見が多かった.未習熟者の方の意見として,「口頭で教わったような修理開始から終了までの手順が内容,図とともに記載してあったのでわかりやすかった」という意見があった.熟練者の意見として,「職人の目から見て工程の順番や作業手順の内容に違和感がなくわかりやすかった」,「少しでもスクールに通ったことがある人なら理解できるような内容だった」というような意見かあった.

作業手順書の文章量
全体的な意見としては「多すぎず少なすぎず適した文章量」だという意見が多かった.この項目については,未習熟者・熟練者というグループではなく技術者が日常的に文章を読むか否かで意見が分かれた.技術者BおよびFは日常的に文章を読んでいるので「もっと文量が多くても問題ない,もっと情報がほしい」という意見があった.それに対して,技術者AおよびCは「これ以上文章量が多いと読む気が起きないので増やさないでほしい」という意見であった.

続いて,各シチュエーションに対する有用性及び総合的な有用性についてまとめたものを述べる.

初心者の教育用としての有用性
全体的な意見として「とても有用性が高い」という意見が多かった.未習熟者の意見としては「以前習ったことを見直すのにも良かったし説明や図が分かりやすかった」,「ミスが起きた際などに間違った点はなかったのかなど確認ができる」という意見であった.熟練者の意見としては「生徒と先生との架け橋となり言葉では伝えづらい部分を学ぶ手助けとなる」,「スクール中もしくはスクール終了後のマニュアルとして役に立つ」,「初級者はわからないことばかりなので自身の手順を確認するのに役に立つと思う」,「今まで口頭で伝えていた内容を可視化できたから教えやすくなる」といった意見であった.
デントリペアの教習を行っている企業の中でも,教本といった作業工程や技術の専門書が存在してなく,文書として残ったものがあれば後から確認ができることや技術を教える側の立場として上記のような評価につながったのではないかと考えられる.


日常利用する用としての有用性
全体的な意見としては「あまり有用性は高くない」といった意見であった.未習熟者の意見としては,「日常的には見ないが忘れているときにあれば便利」という意見であった.
熟練者の意見としては,「既に知っている内容なので見る必要はない」,「工程の確認にはなるが頭に入っているから不要である」といった意見であった.上記の意見から未習熟者にとっては技術を習得するまでは役に立つ可能性があるが熟練者にとっては当たり前のことなので日常的に見る必要がないという考えから以上のような評価につながったと考えられる.

専門書としての有用性
未習熟者と熟練者で意見が分かれた.未習熟者の意見として「作業をしていてミスしやすい工程に対しての対応策があったので参考になった」,「独り立ちして不安になった時に強い味方になる」という意見であった.熟練者の意見として「ほとんど知っている内容であったから専門書としての用途としては足りない」という意見が大半であったが,「自身が身に付けてない内容が書いてあればとても有用である」という意見もあった.
上記の意見は日常的に利用する用としての有用性に対する意見と似た意見であり技術者にとっては既に知っている技術に関しては有用性を感じないが知らない技術が詳しくまとめられた専門書があれば有用であるということが考えらえる.

作業手順書の総合的な有用性
全体的な意見として「とても有用性がある」といった意見であった.上述の3つのシチュエーションの中でも特に「初心者の教育用」としての有用性を高く評価した技術者が多く「技術を学び始めて間もない技術者や技術を学んでいる最中の技術者にとっては習ったことが分かりやすくまとめてあるのでとても役に立つ」,「初心者のガイドラインとして有効だと思う」といった意見であった.

インタビュー結果より,作業手順書の工程順序や記載している内容についての有用性を確認できた.現在のところデントリペア業界には作業工程や修理方法をまとめた資料はないため,未習熟者が習った技術を見直す際や熟練者が技術を教える際の教育するための資料として特に有用性があるのではないかと考えられる.


 

(2)作業時間の比較による有効性の検証
作業手順書の効果を検証するために,提案手法の作業手順書作りに携わった未習熟の技術者1名の協力のもと作業手順書作りに参加する前と参加した後で作業時間にどのような違いがあるかを比較した. なお,作業手順書の効果は即効性のあるものではないため3か月間期間を空け参加前と参加から3か月後の作業時間を2回ずつ測定した.

表4.7 未習熟者の作業手順書利用前と後との作業時間(分)

以上の表が測定結果をまとめたものである.参加前と参加後では作業時間が参加前の2回目よりも作業時間が長くなっているため作業時間の短縮に効果があったとは言えないが,参加前と後での1回目と2回目の差が短くなったため作業時間のばらつきは抑えられたのではないかと考えられる.
また,技術者に参加前と後でどんな点が変化したのかを尋ねたところ,以下のような意見が得られた.作業手順書作りに携わったことで,熟練者は自分なりの手順を持っていることに気付けた.それによって,闇雲に手順を行ってもうまくいかないということを気づけた.今は作業手順書をベースとしてさらにプラスアルファとして自身がよりうまく作業できるように自分なりの手順を模索している.また,作業手順書の初めのポンチングの工程を自身の作業手順に組み込むことにより大きな失敗が起きることも減ったし次に自身が何をすればいいのかを考えながらやる習慣が生まれた.作業手順書並びに作業手順書作りに参加できたことはとても良い経験になった.教わることだけでなく見直しにより復習ができるようになる.

測定時間の比較結果より,作業時間のばらつきを抑える効果がみられた.さらに自身が行っている作業工程を作業手順書の内容と比較することでヘコミを直すのに失敗した時にどこが違うか,何をすれば良かったのかを確認することができたという意見があった.そのことから自学自習する際に利用する教育用の資料としての有用性があるのではないかと考えられる.

以上のインタビューおよび測定時間の比較結果から作成した作業手順書の有効性を示すことができたといえる. さらに,作業手順書を作る過程で作業者の知識の確認や見直しができたことから手順書だけでなく手順書を作るという経験にも有用性があるのではないかと考えられる.

4.4 まとめ

本章では,前章において提案した特殊作業工程の抽出方法およびエスノグラフィによる標準化方法を実際の事例に当てはめることにより提案手法を検証するとともに,作成した作業手順書の有効性の検証を行った.その結果,提案手法の実行可能性と有効性を評価することができた.特に作業手順書の有用性の検証においては本研究の目的であった教育用の資料としての有用性を示すことができた


 

本研究では,属人性が高い技術が必要となる技術者の技術レベルや習得理解度向上および現場での教育を目的とした作業手順書作成を目指した.属人性が高い技術は感覚や作業者の意識といった映像には見えづらいものに頼っており作業分解では標準化が困難という問題に対して,従来の標準化手法および熟練者から未習熟者への技能継承に関する研究とその問題点を整理し,その問題点に対してエスノグラフィという行動観察によりカンやコツを抽出する方法を活用した特殊作業工程の標準化方法を作成した.提案手法を実際の事例に当てはめ作業手順書を作成することにより提案手法の実行可能性を検証するとともに,作成した作業手順書の有効性の検証を行った.検証から,未習熟者が自身の作業工程を見直すことで作業時間のばらつきを抑える効果が見られたことにより未習熟者が自学自習する際に利用する教育用の資料としての有用性が得られた.

 


 本研究では,作業者の技術レベルや習得理解度の向上を図るための教育用の作業手順書作成を目的とし,特殊作業工程の抽出方法および作業手順書作成方法について提案した.
今後の課題としては,以下のような点を考慮する必要があると考えている.

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